『主導権』



「ん……ぁむ……んんっ……」

 固く滾った亮の物に満遍なく唾液を塗していく。
 あたし―――七荻鏡花は、今、恋人である羽村亮への口唇愛撫の真っ最中だった。

「っ……ふぁ……っむ……」

 根本から先端へ、先端から根本へ。
 何度も何度も舌を往復させる。

「ぅむ……っは……。どう? 感じる?」

 熱い尖りを手で優しくさすりながら、上目遣いで亮に尋ねる。

「ああ。すっげー良い。最高だよ」

 あたしの頭に手をポンと添えて亮が答を返してきた。

「ふふ、ありがと。だったら、もっとサービスしてあげるわね」

 亮の言葉に気をよくしたあたしは、更に奉仕に熱を込めた。

 奉仕。
 これほどあたしに似合わない言葉もないと思う。
 自分で言うのもなんだが、普段のあたしは女王様タイプなのだし。
 だけど、あたしは今、現実に奉仕をしている。這い蹲って、熱心に。
 もちろん、それには大きな理由があるのだが。
 その理由とは、一言で言えば『主導権を握るため』である。
 先程も述べたように、いつものあたしは女王様タイプ。従って、亮に対しても常にあたしの方が主導権を持っている。手綱を握っていると言ってもいい。
 マナちゃんとかから「男の子の操縦法を指導して下さい」などと教えを請われるほどに。
 しかし、例外があった。
 夜、特にベッドの中では完全に立場が逆転してしまうのである。
 いいようにあしらわれ、翻弄され、弄ばれ、呆気なく高みに打ち上げられてしまう。
 正直言って悔しい。
 このままでは気が済まない。何とかしてあたしが主導権を得たい。
 そこであたしは決断した。あたしが常に攻め役に回ろう、と。
 そして、同時にこうも思った。先に一度亮をイカせてしまおう、と。
 あたしの経験上、一回絶頂に達すると、次に達するまでのハードルは極端に低くなるものだということは分かっている。そして、達すれば達するほど、どんどん峠を越えやすくなるということも。
 何度も絶頂を迎えていると、最後にはイキっぱなしになってしまい、恥も外聞も捨てて許しを請うようになってしまう。そうなってしまえば、もう主導権もへったくれもない。相手に支配されるのみ。
 つまり、亮をその領域に追いやってやろうという算段だ。
 そうすれば、亮はあたしの手の平の上。ベッドの上でもあたしの立場の方が強くなる。
 我ながらナイスアイデア。完璧。これはもう実行するっきゃない。

 ということで、

「んむ……っふ……ん……ふあ……」

 ご奉仕、とあいなったわけである。

「ぅぐ……ぷぁ……ん、んん……っ……」

 逞しくそそり立った亮の物に舌を這わせる。
 口に含み、音を立てて吸い上げる。

「ぁふ……んっ……」

 先端に口付け、穴を舌で擽る。
 同時に、袋の部分を手で揉みしだく。

「……くふっ……んぁ……」

 全体をピチャピチャと舐めしゃぶる。
 口いっぱいに頬張りながら、手でコシコシと扱く。

 あたしは、思い付くままに刺激を与えていった。
 他の男の物だったら嫌悪感を憶えるかもしれない肉の槍。
 でも、亮の物だと思うと、感じられるのは愛おしさのみ。
 邪とも言える作戦のことなど忘れて、純粋に亮を悦ばせたいという気持ちになってくる。
 その為、愛撫にもついつい熱が入った。
 無我夢中といった風情で奉仕を続ける。

「鏡花……もういいって」

 心地よさそうにあたしからの愛撫を甘受していた亮。
 しかし、暫くすると、そう言ってあたしの動きを止めようとしてきた。

「これ以上されたら出ちまうよ」

 苦笑混じりに亮が訴えてくる。

「ん」

 応えて、あたしは口を放した。
 ―――が、

「んんっ……あふぁ、ぅく……っん……」

 すぐにハッと我に返り、再び彼の物を銜え直す。
(素直にやめてどうするのよ、あたし!)
 心の中で自分にツッコミ。
 亮を愛することに夢中になって、狙いのことが本気で綺麗サッパリと頭から飛んでいた。
(出させるのが目的なのよ。ここで止めてどうするの!?)

「んあ……ん……ふっ、あむっ……」

 自分に活を入れると、あたしは口唇愛撫を激しくする。

「お、おい。鏡花!? 止めろってば。マジで出しちまう」

 亮の制止の声は当然無視。

「ぅあ……んくっ……ふぅ……」

 限界まで口の中に含み、加えて舌でペロペロと舐め回す。

「っ……や、やばいって! このままじゃ中に……」

 亮の声が切羽詰まったものになってきた。そろそろ限界なのだろう。

「んむっ……ふ、っん……ぅあ……」

 その声に力を得て、あたしは更にかさに掛かって責め立てる。
 唇と舌と二十本の指、動かせる物を総動員して亮を愛する。
 上目遣いの瞳で「出していいのよ」と語りかけながら。

「く……鏡花……俺、もう……」

 亮の顔が歪んだ。彼の物もビクビクと痙攣している。
 頃合い。あたしはそう判断した。
 トドメとばかりに両手でゴシゴシと扱き上げ、先端部分に軽く歯を立てた。
 その瞬間、

「うぐっ!」

 亮の呻きと共に、あたしの口内に熱い液体がドクドクと放出される。
 口中に広がる苦い味。
 あたしはそれを、亮に見せ付けるようにしてゴクリと飲み干した。

「……き、鏡花」

「うふふ」

 呆気に取られた顔で見つめてくる亮に、あたしは妖艶な笑みで返す。

「どう? 良かった?」

「あ、ああ」

 まだ、どうか呆然としている亮。
 気持ちよさのあまりに放心しているのかもしれない。

「ふふ、まだまだこんなものじゃ済まないわよ」

 唇をペロリと舌で舐め上げると、あたしは亮をそっと押し倒した。
 そして、彼の引き締まった身体に指を這わせつつ、未だに固く漲っている物をあたしの女の部分に収めていった。

「これからが本番だからね」

 ここまでは完璧。ベッドの中での主導権、それは既にあたしの手中にある。
 その事実に、あたしは深く満足した。

「楽しませてあげるわ。もっとも、そんな余裕があるかどうかは分からないけど」

 あたしは亮を見下ろして勝ち誇ったようにそう宣言すると、ゆっくりと腰を動かし始めた。

 手に入れた主導権を確固たる物とする為に。だめを押す為に。



○   ○   ○



 20分後。

「ひあぁぁああぁ! ああ、も、もう、だめぇ……」

 あたしは亮に組み伏せられて、彼の思いのままに鳴かされていた。
 最初は亮の上に乗っていたはずだが、いつの間にか四つん這いにされ、後ろから刺し貫かれている。
 目論見は、脆くも瓦解していた。

「んああ! っく!」

 シーツをギュッと掴んで快感に耐える。
 あたしは既に崖っぷち。少しでも気を抜けばあっと言う間に飛ばされそうだ。
 そんなあたしの状態を見越したように、亮があたしの一番鋭敏な粒をキュッと摘んでくる。

「ひぐっ!」

 そして、間髪入れずにクイッと捻った。

「っっっ!!」

 全身に電流が流れた。
 意識が急激に高みに持ち上げられる。
 耐えようとする暇すらなかった。

「ふあああぁぁあああぁあああああぁぁぁ!!」

 あたしの口から極まりの証が漏れる。
 亮と繋がってから、これで早くも2度目の絶頂。
 体中から力が抜けて、ガクッと倒れ込む。
 でも、亮の動きは止まらない。尚もあたしを責め立てる。

「や、やめっ! お、おねが……んあっ……おね、がいぃ」

「ダメ。さっき、俺が止めろって言っても鏡花は止めなかったからな。だから、お返し」

 あたしの必死の訴えに、亮は余裕綽々の声で返してきた。

「ひあっ……そ、そんな……んくぅ……ゆ、ゆるし……てぇ……」

 前述したように、達すれば達するほど峠を越えやすくなる。
 あたしがイキっぱなしの状態に陥ってしまうのは時間の問題だった。

「今日は鏡花がサービスしてくれたからな。俺もたっぷりと可愛がってやるぜ」

 言いつつ、亮は腰の動きを速めた。

「ひいぃぃっ! らめええぇぇ!」

 息も絶え絶えに叫ぶあたし。

「あはあぁぁあああぁあ、ひぐうぅうぅぅ!」

 その声を耳にして、亮が調子に乗ったようだ。攻めが一層苛烈さを増した。
 勢い良く腰を突き入れ、あたしの淫核をコリコリと引っかき回す。

「……あっ! かっ! ひあっ!」

 それだけの愛戯に耐えられるだけの余力はもうあたしにはなかった。
 瞬く間にあたしの全ては真っ白に染められ、

「やあああぁぁぁあああああぁあああああぁぁぁぁっっ!!」

 呆気なく再び飛ばされた。
 にも関わらず、亮の動きは止まる気配を見せない。
 脱力した身体を休ませることも出来ずに、あたしはすぐさま全身を跳ねさせられる。

「ふはあぁ……あぐっ……くはあ……」

 もう自分の意志ではピクリとも動けない。既に限界を越えつつある。
 対照的に、亮は未だに放出する気配すら見せない。如何にも『これから』といった感じだ。
(何故? 何故なの?)
 薄れた意識の中でそんな疑問が浮かぶ。

「どうした? まさか、もうダメなのか? おいおい、勘弁してくれよ。俺はまだまだ余裕たっぷりなんだぜ。何と言っても一回出してるからな」

 腰の動きを止めて、あたしの疑問に応えるかのように亮が零す。
 それを聞いて、あたしは大きな衝撃を受けた。

 え?
 一回出してるから?
 も、もしかして、男の人って……二回目って長持ちするものなの?
 ……ということは、あたしがしたことって……逆効果?

 あたしの頭の中でガーンという音が響き渡る。

 うう、知らなかった。
 つーか、いつもは亮は一回しか出さないものね。あたしが知るわけないか。
 まあ、亮が一回しか出さない……もとい、出せないのは、あたしがダウンしちゃうからなんだけど。
 そっかぁ。男の人ってそうなんだぁ。

 一つ学習したあたしだった。
 代償は非常に大きかった気もするが。

「滾っちゃってこのままじゃ収まらないんだ。悪いけど、今日はとことんまで付き合ってもらうぜ」

 そう言うと、亮は腰の律動を再開させた。

「ふあっ! あああぁあぁぁぁあっ! ま、待って……やめてぇ……また、またイク……イッちゃうからぁ……ふあぁっ……ま、待ってよぉ……まっ……っ!」

 途端に、いとも容易くあたしは追い詰められ、そして、

「そんな、そんなぁ……ダメ、もうイ……ひぐっ……ゆるし、てぇ……ああっ……ひああああぁあぁぁぁぁああぁぁあああぁぁっ!!」

 あっさりと、本当にあっさりと、あたしは遙かな高みに飛ばされた。

「……っ……ふ……ぅ……ぁ……」

 魂までもが破壊されそうになる壮絶な絶頂感。全身がバラバラにされたかのような極み。
 それを亮によって徹底的に味わわされ、

(ああっ……主導権を握るなんて……無理。……ベッドの中では……亮に、絶対に勝てない)

 あたしは完璧に敗北を認め、悟らされ、心の底から屈服していた。

「ほらほら、こんなんでへばるなよ。もっと頑張ってくれよな」

「らめぇ……あ、あたしぃ……もう、ほんとに……らめぇ……」

 見事なまでにグッタリと脱力したあたし。

(あたしに朝は訪れないかも)

 脳裏にはいずみの決めセリフが浮かんでいた。

「さてと。そんじゃ、そろそろ本気でいくぞ」

「っ!? んんんっっ! ふああぁぁぁああっ!」

 夜は、まだまだ終わらない。







< おわり >




 < 追 >

 情事の後、亮から「口でされるのすっごく良かった。次の時もしてくれないか」って言われたけど、あたしがキッパリと断ったのは言うまでもない。

「絶対に、絶対に、ずえええったいにイヤーーーーーーーーーーーーっっっ!!」







 ☆ あとがき ☆

 うちのHPではどうあっても鏡花が受けです。
 攻めまくりの彼女も面白いと思いますけどね(;^_^A


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