『ひとりえっちの二乗(ToHeart(たさい:宮内レミィ+α))』
「……っ……ふぁ……」
――夜。
闇に包まれた室内に、少女――宮内レミィ――の甘い吐息が響き渡っていた。
「んッ……ァあ……ひ、ヒロユ、キ」
訴えるように愛しい者の名を呼ぶ声。
しかし、それに応えるべき相手はその場にはいない。
当然である。彼は今、別の少女との逢瀬を楽しんでいるはずなのだから。
「あぁ……ヒロユキ……ヒ、ロユ……」
にも関わらず、レミィは彼の名を口にする。
愛おしげに、何度も何度も。
指を、己への攻めを止めぬまま。
自慰。
時折、本当に時折であるが、レミィは自分で自分の身体を愛する事があった。
十日に一度の浩之との情事。
彼女は決してそれに対して物足りなさを覚えているワケではない。
だが、レミィの若い肉体は、稀にではあるが慰めを求めてきた。
身を疼かせ、自らへの愛撫を渇望する。
「……ぅ……んくっ……ああぁあ……っ……」
いたぶる様な激しさで以って、レミィは自分の胸を強く揉みしだいた。
「ふあぁっ! ぁ、ぅあ、あひぁぁ!」
レミィは堪らず声を震わせる。
開始当初こそ喘ぎを抑える努力をしていたが、今や完全にそれは放棄されていた。
導かれるがままに、あるがままに、己の昂りを発散させていく。
「きゃふっ!」
豊かな胸の突端で固くなっている蕾。
その突起に触れ、摘み、レミィは声色を一オクターブ跳ね上げた。
「こ、こんな、に……ぅく……か、かた……ぁぁ……固く、なって……」
恥ずかしげに零しつつ、彼女はコリコリと朱玉を引っ掻く。
と同時に、手を下方にも伸ばし、既に滾々と蜜を溢れさせている秘めやかな箇所にも指を這わせた。
「あ、んぁあっ! こ、こっち、も……ビショビショに、ぬ、ぬれ……ぅああぁっ!」
クチュリ、と淫猥な音をさせて、レミィは自分の華を愛し甚振っていく。
「あ、アタシってば……や、やっぱり……エッチ、なのかナ? ひ、ひとりで……ぁん……こ、んな……こと……する、なんてぇ」
左手で胸を、右手で秘所を。同時に攻め立てながらレミィが自問した。
「他の……み、みんなは……んんっ……き、きっと、し、てない、よネ」
レミィは心からそう思っていた。自慰などをしているのは自分だけに違いない、と。
無論、それは正解ではない。他の面々も十代の若い女性。身を疼かせる事もあれば、己を慰める事だって当然のようにある。
しかし、レミィがそう思わないのも無理からぬこと。いくら親しいとはいえ尋ねられないこともある。家族といえど、「ねえねえ、みんなは昨日の夜、オナニーした?」とは訊けない。さすがに訊けない。
その為、彼女の頭の中では『自分だけが特別いやらしいのでは?』という疑念が湧き上がっていた。
けれども、今この場に於いては、その思い――背徳感や罪悪感、嫌悪感といった諸々の負の感情――はスパイスでしかなかった。自分はエッチだ、皆よりもいやらしいんだ。そう思えば思うほど、レミィの指は激しさを増し、身体を苛め追い詰めていく。
「うあぁぁっ! ふあっ! あああぁあぁぁあああああっ!」
声を張り上げる。否、張り上げさせられた。
ギュッときつく目を瞑り、髪を振り乱してレミィは悶えた。
胸の先端をグニグニと押し潰さんばかりに捏ね、蜜が飛沫となるほどにオンナを掻き回す。
「がっ、ぅあ! ああっ、あっ……っっ!」
次いで、秘華の端に佇む尖りに手を掛け、
「んんんんっ!」
半ば強引に包皮を捲り上げた。
そして、剥き出しとなった敏感な珠を転がし回す。
「あぐっ、ひっ、あ、うあぁああ」
全身を派手に跳ねさせてレミィが泣き喚いた。
己に罰を与えんが如くの勢いで、右手の中指と人差し指でぬかるんだ窟を掘り返し、親指で過敏な小玉を容赦なく押し潰す。また、左手は自慢の双丘の形を休む間もなく変え続け、極限にまで膨らんでいる朱い芽を抓り捏ね掻いた。
「ひああぁぁあぁあっ、ァああ、んぁ、ああああぁあっああああぁぁぁっ!」
呵責。一切の遠慮も加減もない全力疾走な自慰。
その激しい時は、その激しさのまま唐突に終焉を迎える。
「――っ!? あ、ああ……」
半ばアクシデントであった。
尽きずに零れだす雫。それにより、レミィは右手親指を少々滑らせてしまった。
「あ、あ……ぁ……」
ガリッと淫核に立てられた爪。予想外の衝撃。
途端に――意図していたより早くに、半強制的に――彼女へと絶頂感が襲い掛かった。
「ぁあああっあああ、ああぁぁ!」
無論、それに耐えられるはずもなく、
「うあああああぁあぁぁぁああああっっぁあああっ!」
背をグッと仰け反らせ、高々と叫びを放ちつつ、レミィは果てた。
「……っ! あ、ぁぁ……ぅあ……ぁ……」
派手に気を遣り、全身をガクガクと震わせ、そして……
「……ぁ……っ……」
スーッと意識を深淵へと落としていった。
――が、次の瞬間、レミィの目がパッチリと開かれた。
「あ、アレ? 入れ替わった?」
そう言いながら、彼女は身を起こす。
「ふあっ!? う、うう。ち、力が入らない」
訂正。身を起こそうとして見事に失敗した。
「う、うぁっ。な、ナニ? カラダが……あ、熱、い……ああっ!」
レミィの失神と共に出てきた少女。彼女の名はカリンと言う。つまるところ『ハンター』であり『裏』であり『2P』。
レミィの別人格であり、便宜上別名が付けられてはいるが、言うなればもう一人の宮内レミィである。
そのカリン、突如強い快感――絶頂の余韻――を浴びせられ、ベッドに身を崩すと同時に激しく悶えだした。
「ば、バカレミィのやつ……っく……な、なに、を……やってた……んあ、ああぁ」
そこかしこに残る悦楽に導かれる様に、カリンはどことなく呆けた表情で自分の身体に手を這わせていく。
「ひあっ!?」
伝わってきた強烈な快悦。それを受けてカリンがハッと我に返る。
そして、慌てて手を引こうとするが、
「ぅ、んっ、な、なんで? 指、止まらな……」
意思に反し、逆らい、彼女の手は蠢き続けた。
「う、ウソ。こん、なの……ぁあ……ウソだ。認めな、い。……アタシ、認めない」
悔しげにカリンが眉を顰める。
「ひ、ヒロユキにこういうこと、されるのなら……ううっ、ま、まだ、しも……じ、自分で……あ、ひっ、あああ……自分でするなんて……アタシ、の、プライドが……くっ、ユルさな、い」
首をブンブンと振って快感を振り払おうとする。自分の指を止めようとする。
しかし、彼女の身体は全てを裏切り続けた。
「な、なんで……なんでヨォ? く、くやし……っ、悔しい」
言葉と裏腹に、カリンの愛撫は更に激しさを増していく。迸る快楽に翻弄されていった。
――それも無理からぬことかもしれない。
彼女の本質は『射る・狩る・殺る』。元々性的な事への興味が薄く、また縁遠かった。
故に耐性が皆無なのである。
そんなカリンが性悦に抗えるワケもなく。
「ああっ! ふああぁぁぁ! れ、レミィのバカァ! ん、んんっ! バカバカバカ!」
自分を――わざとではないにせよ――窮地へと追い遣った張本人に罵声を浴びせつつ、拙い手付きながらもカリンは確実に己を追い詰めていった。
無意識のうちに浩之の愛撫を真似て、胸を激しく揉み、先端の尖りを転がし、秘所を抉り、淡く色付く核を潰す。
「あ、あひぃああ、だ、ダメ、ダメ、ダメダメダメ」
グンッと腰が浮いていく。足の指がギュッと丸められていく。
「悔し……認めな、い……あ、アタシは……アタシは、ぁ、あああぁあっ!」
固く閉じられた目尻に大粒の涙を浮かべ、髪を振り乱してカリンは叫んだ。
叫ぶと共に、ヤケクソ気味に、自虐的に、彼女は両の手が触れている過敏な尖りを二つとも強くきつく捻った。千切れんばかりに捻り責めた。
性に慣れていない彼女には峻烈すぎる刺激。
それがトドメとなった。引導を渡された。
「――っ! ――――――!!」
あまりの衝撃に声も出ない。
全身をブルブルと痙攣させ、腰をバウンドさせる。秘めやかな華からは大量の雫が弾け飛んだ。
そんな派手な姿とは対照的に、カリンは無声で果てた。言う事を聞かぬ自分の手に果てさせられた。
「……ぅ……」
茫然自失の顔でベッドに身を横たえさせるカリン。もはや指一本動かせない。
だから――彼女にはどうすることも出来なかった。
「……あ」
自分が小水を吹き出していても。
「……ぁ……ぁう……」
まずい、なんとかしなければ。
そうは思う。しかし、身体は全く動いてくれない。始末をするだけの体力など欠片も残っていなかった。
いや、体力だけではない。意識も同様。
どうにかしないと。
そんな考えを頭の片隅に置いたまま、カリンの意識はどんどん薄れていき……
「……ぁふ……」
程なく、抵抗虚しく闇へと落ちていった。
――次の日の朝。
レミィは顔に『反省中』との文字の書かれた紙を貼り付けて正座していた。否、させられていた。
「高校生にもなってオネショだなんて……」
ため息混じりの芹香の言葉を受けて、全員の視線がレミィに集中した。
皆、一様に何とも表現し難い表情を浮かべている。
「アウー。なんでぇ? どうしてぇ?」
それらに晒されて、思わず目の幅の涙を滝の様にダバダバと零してしまうレミィであった。
そんな彼女の心の奥の奥で……
「あ、アタシ、しーらないっと」
カリンが冷や汗をダラダラ流していたのはここだけの秘密である。